研究概要 |
ペントバルビタール・ナトリウム(30mg/kg,i.v.)で麻酔したイヌにおいて、以下の知見を得た。 1.フェニレフリン(Phe)の静脈内持続投与(infusion,0.3-10μg/kg/min)は、α受容体刺激を介して、持続的かつ用量依存的な昇圧反応を惹起した。 2.上記用量範囲の30-120分のPhe infusionは、用量依存的かつ投与時間依存的に静脈内アセチルコリン(ACh)投与に対する降圧反応を抑制した。3μg/kg/minで120分infusionを行った場合、ACh誘発降圧反応の用量反応曲線は、約80倍高濃度側へ平行移動した。 3.PheのACh作用に対する抑制効果は持続的であり、3μg/kg/minの場合は、infusion終了120分後にも殆ど回復は見られなかった。なお、血圧はPheのinfusion終了と共に速やかに元に戻った。 4.α受容体刺激薬であるメトキサミンやノルエピネフリンでも、同様のACh作用の抑制が認められた。アンジオテンシンIIの場合も、類似の効果が観察された。従って、昇圧の重要性が示唆された。 5.Pheのinfusionは、ヒスタミン、ニトロプルシド・ナトリウム、カルバコールおよびメタコリンの降圧作用には影響を与えなかった。 6.Phe infusionによるACh作用に対する抑制効果は、コリンエステラーゼ阻害薬処置で殆ど消失し、またAChを左心室内に投与した場合には殆ど観察されなかった。 以上の結果より、Phe infusionによって発現するACh誘発降圧反応の抑制には、肺のコリンエステラーゼによるAChの分解促進が関与していることが示唆された。なお、このようなPheの作用は、ラット、モルモット、ウサギでは観察されなかった。
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