研究概要 |
20日齢と110日齢の雌性ラット肝臓からステロイドスルホトランスフェラーゼ(ST)を分離・精製し、その性質を比較した。ステロイドSTをクロマトフォーカシングクロマトグラフィーで分離すると、20日齢ラットの酵素活性は、主にpH7.8-7.2の画分(画分I)に溶出されたのに対して、110日齢の活性は、この画分のほかに、pH6.6-5.5の画分(画分II)にも溶出された。すなわち、20日齢では認められなかった等電点の異なるステロイドSTイソ酵素が、100日齢で発現していた。これの画分のSTを、PAP-aqaroseアフィニティークロマトグラフィーで精製し、二次元電気泳動で分析した。ラット肝臓のステロイドSTは、サブユニット分子量(約30kDa)が同じで、等電点が異なる4つのisoelectric variants(pl=7.2,6.7,6.1,5.8)から成り立っている。20日齢の画分IのSTは、主にpl7.2と6.7のisoelectric variantsから成り立っていた。110日齢の画分Iも同様な組成を示したが、画分IIは主にpl6.7と6.1のvariantsから成り立っていた。20日齢と110日齢のvariantsのN末端のアミノ酸配列は、およそ40残基まで完全に同じであった。 以上の結果は、ステロイドSTのisoelectric variantsが、同一の前駆体から翻訳後の修飾によって生成するか、あるいは別々の類似の遺伝子の産物であることを示唆していると考えられる。また、雌性ラットの20日齢から110日齢までの発達の過程で、pl6.7と6.1のisoelectric variantsから成るステロイドST(画分II)が増加するものと考えられる。
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