研究概要 |
スフィンゴ脂質全体の変動を薄層プレート上で定量的に解析できる系を開発した。ヒト急性前骨髄球性白血病細胞株HL-60細胞のスフィンゴ脂質の各スポットのセラミド分子種分析の解析を行なったところ、(1)スフィンゴ糖脂質(GSLs),スフィンゴミエリン(SM)とも構成セラミド分子種は同じで、それぞれに特異的な分子種はない,(2)de novo合成において、優先的に用いられるセラミド分子には、GSLs,SMでそれぞれ特徴がある(GSLsでは、脂肪酸が24:0,22:0,24:1のもので、SMでは脂肪酸が16:0のもの)ことが明らかとなった。HL-60細胞のホルボールエステル、TPAによる分化誘導では、SMの変動に伴ったセラミドの量的変化は認められず、TPAのdoseに依存して応答を示すのは特定ガングリオシド(G_<M3>)の合成反応であった。ヒト上皮性悪性腫瘍培養細胞株のin vitroでの分化誘導現象早期においても特徴的な変動を示したのはガングリオシド合成系で、ネオラクト系ガングリオシドの合成抑制およびガングリオ系ガングリオシドG_<M3>の生合成の亢進が観察された。SMの変化は観察されなかった。このガングリオシド合成変化を実現するガングリオシド生合成調節物質で上記細胞株を処置したところ、分化・アポトーシスが誘導された。ガングリオシドのde novo合成変化は明瞭な形態学的変化に先駆けて起こった。C2セラミド(N-acetyl sphingosine)には分化誘導活性は認められなかった。以上の結果より、がん細胞の分化には、特定ガングリオシドパターン変化が必須であることが強く示唆された。また、posttranscriptionalなレベルでのガングリオシド発現調節が、がん細胞の分化誘導剤開発の有力なターゲットになるうる可能性が示された。
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