研究概要 |
キチンは,N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)がβ-1,4結合した水に不溶性のポリマーであり,その年間生産量は10^9-10^<11>トンと見積もられており,セルロースに次ぐ再利用可能なバイオマス資源として注目され多くの基礎および応用開発研究がなされている. 我々は,これまでに海洋細菌Alteromonas sp.O-7株のキチン分解系を分子レベルで明らかにすることを目的に研究を行っている.本菌は,機能が異なる5種類のキチナーゼ(ChiA,B,C,D,E)ならびに3種類のN-アセチルグルコサミニダーゼ(GlcNAcaseA,B,C)を産生し,キチンをGlcNAcにまで分解していることを明らかにした。このうちChiA,ChiCおよびGlcNAcaseB,GlcNAcaseC遺伝子の全塩基配列を決定し,それらのドメイン構造ならびに部位特異的変異により触媒アミノ酸残基を特定した.ChiAは,signal peptide,chitin binding domain,catalytic domainおよびキチンのみならずセルロースなどに結合性を有するユニークなdomain(CBD)から構成され,一方,ChiCは,signal peptide,CBD,fibronectin type-III domain,catalytic domainから構成されていることを明らかにした.ChiA,ChiCの触媒アミノ酸残基は,GluおよびAspであり,GlcNAcaseBのそれは,2種類のAspであった.現在,キチン分解系に関与する残りの酵素の構造と機能を明らかにするため,クローニングおよび塩基配列の決定を行っている.一方,これらの酵素はキチン存在下で誘導されるが,真の誘導物質はどのような化学物質であるのかも併せて検討している.
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