研究概要 |
我々は既にエタノール摂取時のアンフェタミン代謝物の中から脳内新規代謝物としてテトラヒドロイソキノリン(TIQ)型縮合閉環体である(3S)-1,3-ジメチルTIQを見いだし、そのものが神経毒性を有していることを明らかにしている。今回1位メチル基の立体化学を考慮して両ジアステレオマーの合成を行なった。これら化合物を用いて脳内代謝物の立体化学を検討した結果、(1S,3S)体の方が(1R,3S)体より大量に生成していることが明らかとなった。次にこれらジアステレオマー間の神経毒性の比較を行なった結果、自発的運動量に関してはラット脳内の主代謝物である(1S,3S)体の方が強いことが明らかとなった。 更にTIQ類においてメチル基の位置及び数の差が、神経毒性に与える影響を検討する目的で種々のメチル置換TIQ類の合成を行なった。それらの化合物群の構造毒性相関を行なった結果、1位にメチル基が存在すると自発的運動量は増加する傾向が認められた。またメチル基の数が多いほど急性毒性が強く、このことは化合物の脂溶性と相関すると考えられた。運動の協調性に関する検討を行なった結果、1,3,3-TriMe体及び1,1DiMe体が一番協調性の低下が著しく、3,3DiMe体、1,3DiMe体、1Me体の順で毒性の減弱が認められた。 以上各TIQ誘導体に関して毒性を評価し、メチル基の有無、置換位置、立体配置の違いにより毒性が大きく変動することを明らかにした。
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