研究概要 |
われわれは,自然睡眠を指標としたスクリーニングを行い,断眠させたラットの脳幹抽出物から睡眠促進物質としてウリジンおよび酸化型グルタチオンを単離,同定した.その後,これら睡眠促進物質の睡眠機構における役割を解明する目的で,まずラット脳内における経時変動を脳微小透析-HPLC法を用いて定量分析し,さらに睡眠および覚醒状態との関連を検討することを計画している.その初期の実験において,HPLCクロマトグラム上の睡眠促進物質以外の数種のピークが経時変動し,大まかな昼夜リズムと相関して増減することを見出している.そこで,これらの経時変動が睡眠および覚醒状態と相関性を示すか否かを検討する予備実験を行った. まず脳微小透析-HPLC装置と,自由行動下でラットの脳波を測定,解析する装置とを有機的に結合させ,長期実験を行えるシステムの構築を試みた.しかし,脳微小透析法のプローブである微小透析膜は,期待に反して長期の便用には不適で,脳内埋め込み後数日でめづまりをおこし,脳内からの試料溶液の採取量が極端に低下してしまい,経時変動するピークの統計的に有意な定量値が得られなかった.また,いろいろな材質の透析膜を使用してみたが改善は認められなかった.したがって,特定のピークの経時変動と睡眠および覚醒状態との相関を詳細に調べることは現状では不可能であった。 今後は,上記の長期実験を行えるシステムの構築を続行するとともに,大まかな昼夜リズムと相関して経時変動するピークをそれぞれHPLCで単離したのち構造解析し,さらにそれらのラットの睡眠に対する効果を別個に検討する計画である.
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