研究概要 |
ヒトのAMPデアミネースには基本となる3種類のアイソザイムが存在し、遺伝子AMPD-1は筋型を、AMPD-2は肝型を、そして第3の遺伝子AMPD-3は赤血球型をコードしている。赤血球型酵素の完全欠損例は、我々が世界で最初に健常人中で発見しているが、この研究ではヒト赤血球型AMPデアミネース欠損の遺伝子変異を同定し、変異遺伝子のスクリーニングを行い、遺伝子変異の種類や変異遺伝子の頻度、分布などを明らかにすることを最終目標とし、またこれらの検討を簡便かつ迅速に行うため、AMPD-3の染色体遺伝子の構造の解明を並行してすすめ、以下の成果を得た。 1)決定した赤血球型AMPデアミネースcDNAの全塩基配列を基に、完全欠損例2例のBリンパ芽球のmRNAを、RT-PCR法とそれに続くdirect sequencingにより分析し、主たる変異R573Cを同定した。 2)日本人の遺伝子スクリーニングがら、同定した変異R573Cが全体の約75%を占めるが、残りの25%は他の変異によると考えられ、12例を分析し9種の変異(600delT,N310K,1320V,M324T,R331C,R402C,Q433X,W445R,P585L)の同定に成功した。 3)酵素活性を発現する大腸菌ベクターに主たる変異R573Cを導入し、この変異が酵素欠損の原因であることを確認した。また600delT,M324T,R331Cについても同様の実験で酵素欠損の原因であることを確認した。 4)PCR法を駆使し、ゲノムの全エクソン・イントロン接合部の塩基配列を明らかにし、ゲノムからのエクソン部を増幅できるようプライマーをデザインし、今後の変異の同定を容易にした。また、LA-PCR法によりゲノム遺伝子を6つのパートに分けて増幅可能とし、AMPD-3遺伝子のおおよその全長を明らかにし得た。
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