研究概要 |
悪性腫瘍切除の際には所属リンパ節も郭清するが,その際リンパ節の識別およびリンパ行の判定が重要になる.この目的のため種々の染色化剤が用いられてきたが,満足できるものはほとんどない.そこで,血液と明確に識別できる色素として,緑色のクロロフィルに着目し,リンパ移行性が良好な水中油型乳剤を調製した.本剤についてリンパ移行性および安全性をイヌおよびラットで確認した後,患者に適用した. 1.水中油型クロロフィル乳剤の調製 乳剤は油相にクロロフィル油とゴマ油,水相にグリセリンと水を用いて調製した.界面活性剤はポリソルベート80とホスファチジルコリンを用いた.水相と油相を別々に滅菌した後,無菌下で調製した水中油型乳剤は,室温で少なくとも1週間は安定であった. 本剤をイヌの胃粘膜下に内視鏡下で注入したところ,投与2日後,胃周囲のリンパ節およびリンパ管の一部が染色され,本剤のリンパ移行を確認することができた.また,本剤をラットの腹腔内に投与し,7日間の観察および組織検査を行ったところ,行動に異常は認められず,主要臓器においても組織学的異常は認められなかった. 2.悪性腫瘍郭清のための消化管リンパ系染色の基礎的検討 筑波大学「医の倫理特別委員会」の承認のもとに,胃癌症例7例に対し術中のリンパ節の視認を試みた.胃角部に注入した症例3例,幽門部および胃体部大わんに注入した症例4例において,3〜8番リンパ節に色素が認められた.(第11回筑波大学外科懇話会抄録集,p.15,1993)
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