研究概要 |
我々が開発した光増感反応を応用した内皮損傷動脈血栓モデルを用いて,血栓性閉塞および血栓溶解処置後の再閉塞における血小板活性化と血小板由来の血管収縮の関与について検討した.生体顕微鏡システムを用いてラット腸間膜動脈に励起光と色素rose bengalにより血小板血栓の形成を誘導し,その形成課程を検討した結果,先ず照射部位への血小板粘着・凝集がおこり,その後照射部及びその下流近傍でspasm性の血管収縮を伴った後,血管内腔が血小板血栓により閉塞する様子がみられた.しかし,血管によってはspasmを伴わずに閉塞することがある.この場合でも,閉塞部位の血管径は短縮しており,閉塞時に収縮を伴ったものと考えられる.この収縮はTX拮抗薬と5-HT拮抗薬との併用により抑制された.したがって、活性化血小板より放出されたTXA2と5-HTが局所的血管収縮(照射部とその下流近傍)をひきおこしたと考えられた.そこで血小板由来の血管収縮がどの程度閉塞性血栓形成に関与しているかについて,モルモット大腿動脈血栓モデルを用いて血小板抗体(GPIIb/IIIa拮抗薬)とこれまでに検討した他の抗血小板薬の抗血栓作用と抗凝集作用を比較することにより検討した.血小板抗体はTX拮抗薬に比べて血小板凝集を顕著に抑制したが,逆に抗血栓作用は弱かった.抗体は凝集自体は抑制したが,放出反応の抑制は弱かった.したがって,放出反応に伴う血管収縮を抑制できなかったことが,抗凝集作用に比べて抗体の抗血栓作用が弱かった一因と考えられ血栓形成において血小板由来の血管収縮が重要な役割を演じていることが示唆された.同様に血栓溶解薬t-PA処置後の再閉塞についても,その予防効果はTX拮抗薬に比ベ血小板抗体の方が弱かった.したがって,PTCA後の再閉塞にも血小板由来血管収縮が関与していることが示唆された.
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