研究概要 |
平成5年度の成果 散乱光を用いた血小板凝集能測定の試作機を改良し,散乱光データの取り込み速度の増加,継時的なデータの処理を可能にした。また,光源を新たに設置し,同一の検体について従来の光透過性を用いた血小板凝集と,散乱光による血小板凝集が判定できるようにした。散乱光強度と血小板凝集塊のサイズの相関をコールターカウンター及び顕微鏡下の目視にて詳細に評価し,散乱光を用いた血小板凝集能測定の定量性を確認し,従来の光透過性を用いた血小板凝集計よりも,優れた方法であることを確認した。 平成6年度の成果 種々の刺激剤による健常人の血小板凝集能を判定し正常値を求めた。年齢,性別による評価を行い,高齢者,女性の値がより高いことを確認した。末梢血血小板数,乳糜血漿など血小板凝集に影響を与える因子を考慮し,散乱光を用いた血小板凝集能測定の標準化をはかった。血小板数は,10^4cells/μ1までの低値でも測定が可能であり,これまでは不可能であった血小板数の減少している患者においても血小板機能の判定が可能となった。また,乳糜の状態が強い検体,また実験的にリポ蛋白を加えた症例でも,正確に血小板凝集の測定が可能であることが示されこの測定装置の臨床的な応用は広いことが示唆された。従来の光透過性を用いた血小板機能測定法では検出不可能であった自然凝集が,本法では鋭敏に検出できることがわかった。自然凝集は,糖尿病,脳血栓症などの血管病変を有する疾患で有意に高値をとり,特に糖尿病では,神経伝導速度,網膜病変の進展と,自然凝集の出現が高い相関を示すことが明らかになった。これらの検討により散乱光を用いた血小板機能測定法が,臨床上有意義な情報を与えることが示唆された。
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