研究概要 |
虚血性心疾患患者の生活管理の実態を調査することを目的に便宜的標本による質問紙調査を郵送法により実施した。質問紙は,先に黒田(1991)が作成した内容を再検討し修正を加え使用した。質問内容は【.encircled1.】デモグラフィック変数,【.encircled2.】生活管理尺度(黒田作成),【.encircled3.】不安尺度,【.encircled4.】そううつ尺度,【.encircled5.】人生満足尺度,【.encircled6.】自尊感情尺度によって構成した。結果,調査対象は245名(回収率53.6%)で平均年齢は58.2才(S.D.7.8)であった。心筋梗塞症が85.1%とほとんどであり,平均罹患年数は9.8年(S.D.9.1)であった。生活管理の実態については以下が判明した。まず,服薬や定期的な外来通院,排泄,食事の管理については比較的実施できていた。さらに,これらが実施できている者ほど,家族の支援を得ていた。しかし,療養法の失敗や辛さという情緒のコントロールについては成されていなかった。さらに,病気をこれ以上悪化しないような行動や病気自体の素直な受けとめについてもうまくコントロールできていなかった。これらの生活管理の実態と不安、うつ傾向、人生満足度、自尊感情との関係については以下が判明した。すなわち,生活の管理が全体的に実施できている者ほど,人生満足度や自尊感情は高く,逆に不安やうつ傾向は低かった。さらに,生活の管理とデモグラフィック変数との関係では,罹患年数が高い者ほど,あるいは服薬の種類が多い者ほど生活の管理が実施できていなかった。以上見い出された社会生活をする虚血性心疾患患者の生活管理の実態は一般化するにはサンプリング等に問題が残った。しかしながら,これらの結果は,保健医療従事者が専門的なケアを提供する際に考慮に入れなければならない具体的な指導内容に多くの示唆を与えるものである。
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