研究概要 |
過去3年間に,老人病院の入院患者,病棟勤務者,環境のMRSA汚染状況を検査した結果から,これまでの看護業務および消毒・清掃法では不十分な点が判明したので老人病院に適したMRSAおよび種々の病原体による院内感染防止マニュアルを作成して実践した。 「看護上の管理」では,準隔離の基準と運用規範を作成した。また,医療従事者の予防衣の汚染も院内感染の媒介体になっているので,汚染状況と汚染箇所の分析を行い予防衣の消毒・洗濯の規準も合わせて作成した。 「看護業務」では,病棟内の汚染防止のため,病棟を2区画に分け,非保菌者から保菌者へ業務を行う。また,汚染の危険性のある業務ではビニール手袋を着用し,患者毎に交換するなど,看護業務の合理化と手順の徹底をはかった。 「看護業務」や「清掃業務」のマニュアルを実践する上で殆どの看護婦や介護職員は支障ないと回答しており,業務の中にマニュアルが浸透し,その定着がなされている。 しかし,「病棟管理」の部分では,新患の入院時検査結果の判明するまで患者を個室に隔離することについては,個室が少なく満床の時はマニュアル通りに実践できない場合がある。清掃業務・汚染処理などに携わることの多い介護職員に対する感染防止に関する院内教育の問題は大きい。従って,介護職員が理解しやすい具体的なマニュアルの追加やマニュアル活用のための効果的な方法を工夫する必要がある。 マニュアルを確実に実践するとMRSAの検出率は低下するが,外来者によるMRSAの持ち込みという新たな問題も出て来た。MRSA感染防止対策の業務マニュアルを中心に考えてきたが,患者やその家族に対する指導を明文化している施設は少なく,これらを対象としたパンフレットを作成・活用し正しい知識を指導して協力を得る必要がある。今後の研究課題として検討する。
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