研究概要 |
本研究は,低品質米の炊飯特性を解析することにより,これを改良するための基礎技術を確立することを目的とし,以下の成果を得た. (1)低品質米の炊飯特性には,硬い,粘りがない,光沢がないという3特徴があった.古米では,香りが悪いことがこれに付加された.硬さの特性が劣る要因として米飯糊化度が低いことを,粘りおよび光沢特性が劣る要因として熱水可溶性でんぷんの生成量が少ないことを明らかにした.硬い米飯を軟化させるためには,米粒全体にわたってでんぷんを包囲している微小空間を破壊または拡大する処理を施して米飯糊化度を向上させればよく,米飯に粘りと光沢を発現させるためには,米粒表面にでんぷんを適度に遊離させてそれを十分糊化させ,米飯表面をそれで被覆すればよいと結論した. (2)低品質米の米飯を軟化させる方法として,高圧処理または多糖分解酵素処理を施した.米に高圧を負荷すると,米飯の硬さは低下した.多糖分解酵素による処理でも,米飯の硬さは低下した.米飯割断面の電子顕微鏡観察から,高圧または多糖分解酵素処理による米飯の軟化は,胚乳細胞壁の部分的破壊によるものであることを明らかにした. (3)低品質米の米飯に粘りおよび光沢を発現させる方法として,米にプロテアーゼ処理を行った.プロテアーゼ処理で米飯に粘りと光沢が発現するのは,でんぷんを胚乳細胞内に固定している塩溶性タンパク質がプロテアーゼによって水解されて,でんぷんを米粒外へ流出させるためであった.さらに,アクチナーゼはでんぷんに結合している推定分子量60kのでんぷん結合タンパク質を水解・可溶化するので,米粒より遊離したでんぷんの糊化度が向上し,高度に糊化したでんぷん糊が米飯表面を被覆するためであった.
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