研究概要 |
保存料として広く使用されているソルビン酸がある種のカビによって分解され、1,3-ペンタジエンが生成することがあり、これが加工食品貯蔵中の異臭(石油臭)発生の一因であると考えられている。この現象を確認し、その化学量論を明らかにし、ソルビン酸の分解機構を解明するのが、本研究の目的であり、Aspergillus niger IFO 4414を用いて各種の検討を行い、以下の実験結果を得た。 (1)本菌はソルビン酸耐性であり、500〜1,000ppmソルビン酸含有YM液体培地(pH6.4)で比較的速やかに増殖し、ソルビン酸分解能を誘導的に獲得した。 (2)500ppmソルビン酸を含むリン酸緩衝液(pH6.4)に、ソルビン酸分解能を獲得した本菌糸の懸濁液を加え、密封試験管中で30℃にインキュベートし、ソルビン酸の減少をHPLC法で、1,3-ペンタジエンの増加をGC法で経時的に測定したところ、ソルビン酸減少量1μmolあたり1,3-ペンタジエン生成量0.7μmolであった。減少量と生成量の比は必ずしも1:1ではなかったが、本菌糸によるソルビン酸の主要分解産物が1,3-ペンタジエンであることは確認できた。 (3)本菌糸によるソルビン酸分解の至適条件は、pH6.4 30℃であった。また、酸素の有無はソルビン酸の分解に大きい影響を及ぼさなかった。 (4)菌糸を超音波処理した上清液に菌糸と同程度のソルビン酸分解能が認められたが、上清液中の分解能は極めて不安定であり、本分解能の安定化を講ずる方策が今後の課題であることが明らかになった。
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