研究概要 |
LB膜法を利用して洗浄機構を実験的に解析するためのモデル洗浄系の構築を試みた。油汚れのモデルとしてアラキジン酸,基質のモデルとしてセルロースジデカノエートとナイロン6を用いて水面上に展開膜を作製し,固体表面への膜の累積を行った。膜の累積に先立って水面上における分子の配向状態に関する知見を得るために,膜形成物質溶液を展開した水面を徐々に圧縮したときの表面圧-面積曲線を測定した。得られた曲線を基に,水面上で凝縮膜が形成される表面圧で,繊維状石英または炭素繊維の表面に膜を累積した。膜を累積した固体表面の接触角はWilhelmy法により測定した。親水性固体である石英表面に膜を累積した場合は,いずれの膜の場合でも累積により接触角が増大し,累積後の時間経過とともに接触角がさらに増大する傾向が認められ,石英表面が疎水化されることがわかった。また,疎水性の炭素繊維にナイロン膜を累積すると,膜の累積により接触角が減少し,累積後の時間経過とともに接触角がさらに減少する傾向が認められ,炭素繊維表面が親水化されることがわかった。石英の接触角の増大の程度は前進接触角で,炭素繊維の接触角の減少の程度は後退接触角でそれぞれ大きかった。これらの結果はエネルギー状態の異なる表面が混在する不均質表面の接触角に関するJohnsonらの計算結果を用いて説明することができ,膜の累積後の繊維状固体の接触角の経時変化は,時間の経過とともに下地固体に適合した膜構造を形成していく過程を捉えていることがわかった。以上,LB膜法を汚れの付着や基質の作製に利用すれば,よく規定されたモデル洗浄系が構築できる可能性が明らかとなった。
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