1.漢訳西学書所在目録 (1)目録作成。19世紀中国において出版された科学とキリスト教に関する中国書約400点の日本国内における所在目録を作成した。作成にあたり、全国の130以上の原則として公開図書館が発行する230以上の蔵書目録より該当書を抽出、版の違いによる分類をおこない、それらを一覧する方法をとった。中国書の中には日本における需要が高く、和刻本が作成されたものもあるが、これらも同様にして排列した。また一部の図書については、英国図書館やハーバード大学、カリフォルニア州立大学バークレー校など欧米の代表的な機関の所蔵も併記した。蔵書目録だけでは書誌事項が不明な場合は、できるだけ現物調査をおこなった。これらの調査結果、対象とする図書が国内の諸機関に予想以上多く所蔵されていることを確認した。 (2)個別研究、目録作成の過程で多くの資料にふれ、一部の図書については、従来、不明とされてきた事項や、誤って理解されてきた事項を正すことができるだけの情報を蓄積することができた。たとえば、『航海金針』の和刻本は版種が4種あり、初版は安政3年に刊行された可能性が高い。『博物新編』は一度に撰述されたのでなくシリーズものを集め成立した。『重学浅説』の和刻本は官版より民間版のほうが出版時期が早い。以上の新しい見解は各種の研究会で発表するとともに、論孝を研究成果報告書に収録した。 2.漢訳西学書の復元。当初は残存する写本より復元を考えたが、欧米図書館に刊本の現存するものは、その複写物をマイクロフィルムで入手できるため、所在を目録に明記して、この計画の代替とした。 3.欧語新聞雑誌の調査。漢訳西学書出版に関わる記事の調査結果は、目録に特記事項として加えた。この調査は今後も続行したい。
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