研究概要 |
骨の運動の効果を検討し,次の結果を得た. 1.若年者の骨代謝マーカーの測定 フルマラソンが骨形成や骨吸収に及ぼす影響を骨代謝マーカーを用いて検討した.その結果,PYRはレース1日後より減少傾向があり、2日後に有意に減少した.DPYRはレース直後から減少したが、2日後に回復傾向があった.OCはCORの上昇に伴い著明に低下したが2日後に回復した.またPTHの増加とCTの分泌の亢進がみられた.以上よりCOR,PTHやマーカーの血中放出率の変化,クリアランスなどの影響因子を総合的に評価する必要があるが,現在のところマラソン負荷は骨形成,骨吸収ともに抑制するものと考えられる. 2.Dual Enengy X-ray Absorptiometry (DEXA)法による計測 若年者の骨量,骨密度を各種スポーツ競技で施行中だが,種目間の差はあるものの体重当たりの骨密度は有意な差がある結果は得られていない. 3.トレーニングによる骨への影響について 大学アメリカンフットボール選手のトレーニングおよびトレーニング中断による骨塩量・骨密度と筋力の変化を調査した.その結果トレーニングにより部位的な骨密度は増加した.さらに早期に橈骨遠位部,第3腰椎の骨密度が,その後脛骨近位部の骨密度が増加した.また骨密度の筋力の増加は同時期におこる可能性が示唆された.さらにトレーニング中断により筋力の変化が起こる前に上半身の骨密度は減少した. 4.単発性走運動による骨への影響について ラットに対して単発性走運動負荷をかけ,骨代謝に及ぼす影響を検討した.その結果,骨代謝マーカーは運動群において負荷直後にPYRおよびDPYRの値が有意に増加しており,一見骨吸収のみが亢進したように考えられる.しかし単位骨量や分画形成面では運動群が非運動群と比較して大きい傾向があることから,骨吸収のみでなく骨代謝全体が促進されたことが推測された.
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