研究概要 |
セロトニンは,体内ではトリプトファンから代謝されて,5-ヒドロキシトリプタミンを経て生成され,5-ヒドロキシインドール酢酸へと,代謝されて尿中に排出される.そこで尿中のセロトニン中間代謝産物の消長についても総合的に分析し,“あがり"との関連を追求した. セロトニンの代謝の様態を非観血的に研究するために,尿中のセロトニンの分離については,すでに1988年にイオン交換クロマトグラフィーによる分離定量をこころみたが,操作が繁雑であった.そこで、平成5年には,高速液体クロマトグラフィーを用いて分離されたサンプルをECデテクターにより測定するための条件の設定を試みた。その方法を尿中セロトニンの排出量,排出リズムならびに,ストレスのかかる,男子剣道選手の試合前後について,それぞれ測定し、試合前は試合後に比べ,試合当日は平日に比べそれぞれ有意なセロトニンの排出量の低下が認められるという結果を得たので,第42回九州体育学会において,その結果を報告した.その後,女子陸上短距離選手においても,試合前後の尿中セロトニンの代謝には,同様の傾向が観察されている.これらの結果について,J.Sports Med.への投稿を準備中である. 平成6年度には,セロトニンの体内最終代謝産物である5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)の分析に着手し,5-HIAAも試合前には試合後に比較すると,セロトニンと同様に,排出量の比は5-HTよりも大きく現れ,試合前には排出が抑制されることを認め,日本体育学会第45回大会においてその結果を報告した.STAI調査と一日セロトニンの尿中排出量との関連については,排出量が平均値と比較すると異常に低い値をしめした場合に,特性不安評点が平均値より高値を示す例を認めた. ひきつづき,セロトニンの前駆物質である5-ヒドロキシトリブタミンの分析方法を確立し,ストレスの加わる試合時のセロトニン代謝系の変化を追求する予定である.
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