直立二足歩行を基本としたヒトの運動形態からして、下腿筋力は姿勢を保持しながら身体活動を行うのに重要な機能を果たしていると考えられる。筋力は日常生活での活動状態を速やかに反映する特徴を有することより、加齢に伴って変化を示すと考えられる。この様な観点から、4歳より70歳代までの男・女3627名に対し、足関節の底屈力と背屈力を測定し、次の様な結果を得た。【.encircled1.】発育期における下腿筋力の年間増加量の変化はスキャモンの形態発育パターンに類似し、その傾向は底屈力では身長の発達曲線、背屈力では体重の発達曲線とにあった。また、第2発育急進期の急増は女子の方が男子より約1-2年早く出現し、その傾向は背屈力の方が顕著であった。【.encircled2.】青年期に出現すると考えられるピーク値は、男女とも同様傾向を示し、底屈力は20歳代、背屈力は19歳にみられた年齢差のあることが認められた。【.encircled3.】ピーク値を100%とした発達の経過をみると、95%に達するまでの発達経過は、底屈力では男子19歳、女子17歳に、背屈力では男子17歳、女子14歳に達し、底・背屈力に発達速度に約2-3年の差があり、男女差においても2-3年女子の方が早く到達していた。その95%の保持期間の上限は底・背屈力及び男・女に関係なくいずれも30歳代までであった。したがって、背屈力の方が長期間ピーク値に近い筋力を保持しており、その傾向は女子の方に強く認められた。【.encircled4.】中・高年齢者の加齢に伴う筋力の変化をピーク値に対する比率でみると、底屈力では男子40歳代87.8%、50歳代74.1%、60歳代64.9%、70歳代60.1%であり、女子40歳代90.5%、50歳代78.5%、60歳代66.4%、70歳代59.6%であった。同じく背屈力では男子40歳代90.8%、50歳代76.9%、60歳代74.3%、70歳代67.3%であり、女子40歳代87.6%、50歳代82.7%、60歳代77.9%、70歳代67.4%と加齢に伴い規則的(約10%)に低下していく傾向が認められた。以上より、下腿筋力の発育及びピーク値おいては年齢・性及び筋群間に特徴的な差が認められ、また、加齢に伴う低下においては背屈力よりも底屈力の方が、女子よりも男子の方が著しく変化を示したことより、男・女間の筋力差が少なくなることが明らかとなった。
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