研究概要 |
本研究は,最近における在日中国人の増加の背景を明らかにするとともに,日本における彼らの生活様式の特色とその要因について考察することを目的とした。 まず,全国的なスケールで,在日中国人の人口の推移と分布,移住の歴史,出身地,在留資格などに関する資料収集を広範に行った。この際,日本側の資料に加えて,中国側の資料の収集にも努めた。収集した文献資料の整理および統計データの処理は,本補助金で購入したパーソナル・コンピュータを用いて行った。また,在日中国人の集中地区である神戸および長崎で現地調査を行い,在日中国人の人口分布,来日の経緯,生活様式などについて,関連資料を収集した。これらの結果,次のようなことが明らかになった。 1.最近の在日中国人の急激な人口増加は,1979年末以来の中国の改革・開放政策の進展に伴う就学生や留学生の大量来日によるものである。 2.出身地をみると,最近の来日者の中では,福建省とりわけ同省北部に位置する福清市周辺からの来日者がきわだっている。 3.幕末の開港以来,横浜・神戸・長崎に形成された中華街とは異なる新しい中国人のエスニック・タウンが,最近,東京において形成されつつある。 4.従来から日本に居住してきた中国人の大部分が日本社会へ同化しつつあるが,最近来日した中国人は,中国の伝統的生活様式を保持しながらも,短期間のうちに,日本社会の多方面に進出している。また,留学・修学の期間終了後も,日本に残留する中国人が増えている。
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