研究概要 |
長崎市南部地区から、標高50m以上、傾斜10度以上を目安に、南大浦小学校区を取り出し、自動車の利便性を把握した。南大浦校区内の2,121世帯について、自家用車が直接横づけできる世帯率を求めると、わずかに44.9%にすぎなかった。その結果、南大浦地区では居住者の移動性が、斜面という地形的要因によって著しく制約されていることが明かとなった。 次に、この南大浦小学校区から、相生町、出雲1・3丁目、出雲2丁目、二本松地区の4つの老人クラブ所属の人々について、面接によるアンケート調査を実施した。アンケート内容は、被調査者の健康状態、家庭との同居状態、交通の便(車が横付けできるか)、食料品・衣料品の購買行動(頻度・購買先・所要時間・利用交通手段)、受療行動(かかりつけの受療機関数・頻度・所要時間.利用交通手段)、1週間の生活時間の過ごし方などで、詳細な調査結果を78人の高齢者について得た。 その結果、高齢者の行動は、非日常的な生活行動に比べて、日常的な生活行動の方が斜面の制約が強く働いており、斜面の高地部(海抜高度150mにも及ぶ)ほど、日常的生活行動の頻度が少なくなり、日常生活に不便を感じると同時に、健康状態も芳しくないことが明らかになった。 また、生活行動を個人単位でみると、斜面による制約と高齢者の移動能力のなさから1日の生活のリズムは単調なものになり、また1週間の生活リズムは、通院する曜日が決まっていれば、それによって明瞭なパターンになり、通院を軸に生活行動が規定されていることが明かとなった。
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