研究概要 |
本研究は、東西17km、南北25kmの世界的な規模のカルデラをもつ活火山である阿蘇火山およびその周辺地域において、火山体の水の挙動に関して水文化学的見地から研究を行ったものである。 この阿蘇山の周辺地域は、富士山地域とともに日本を代表する火山地域であり、カルデラという火山形態やその周辺地域に厚く堆積した火砕流噴出物という特殊な地形・地質構造からなっているため、地下水や河川水などの水の挙動や水利用などについても特異な水文環境を呈している。この阿蘇火山周辺地域には、研究対象地域の市町村やその他の機関への湧水の分布状況等に関する聞き取り調査とこれまでに公表されている既存資料等のデータを集計したところ、およそ1,500ヵ所ほどの湧水が存在しているものと見積れる。これら約1,500ヶ所の湧水については、その分布特性もほぼ究明できた。 現地調査では、湧水をはじめとする地下水と河川水について、およそ100ヶ所の地点でサンプリングを行った。採水した水の水質分析の項目としては、水温、電気伝導度、pH、主要溶存成分(HCO_3^-,Cl^-,SO_4^<-->,NO_3^-,Na^+,K^+,Ca^<++>,Mg^<++>,SiO_2)、および^<18>O・^2H・トリチウムなどの環境同位体である。これらサンプルについて、主要溶存成分の水質分析は既に終わり、解析を試みた。そして、主な20ヶ所余りの地点については、^<18>O・^2H・トリチウムなどの環境同位体用のサンプルの採水も同時に行った。しかしながら、これら環境同位体については分析の時間がかかり、ようやくデータが出てきた段階であり、解析には多少の時間が要する。また、湧水機構を含めた地下水の流動系については、水文化学的な手法や環境同位体等による水質分析調査からある程度の解明がなされた。なお、本研究の結果については、環境同位体の解析が終了次第まとめるつもりであり、今後さらに検討を進め、より体系化した形で、阿蘇火山地域についての地下水の流動系について、考察を進めて行く予定である。
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