在日外国人教育の教育内容を明確にすることが、本研究の課題であるが、本年度は彼らが多住する地方自治体を訪問し、彼らへの教育にかかわる教育委員会および担当教師、外国人児童・生徒の両親への聞き取り調査を行なった。そして、次のようなことが明らかになった。 (1)中国引揚者(多くの場合、残留孤児または残留婦人の子孫)の場合、帰国後半年ぐらいから、自分の民族性を否定的に受けとめるようになる傾向がある。そしてその傾向が特に中学生に顕著に現われる。理由は、周囲の中国への偏見である。また小学校でも、民族にかかわるいじめ事件が見受けられるが、それほど深刻ではない。ある教師は、日本語に慣れつつある児童への理解を、「A君は、日本語も中国語も出来るんですよ。」という賛辞や、「皆さんが習っている漢字は中国から来たものですよ」という文化交流事例を通していじめを克服したという。 (2)日系南米人と一般化されるが、日系ブラジル人とペルー人の間には彼らの所有する日本語・日本文化への大きな違いがある。また、帰国を前提としている児童・生徒と、永住希望の児童・生徒教育は異なるべきであるにもかかわらず、日本の社会への適応教育に終始しているのが実情である。 (3)ポルトガル語、中国語、スペイン語、ベトナム語など、彼らの言語が理解できる教師がいかに少ないことか、また、地域社会にも支援する人材がいないケースが多い。教師を外国語大学、外国語学部に派遣するなど長期的観点に立つ対応が求められる。 次年度は、それぞれの定住外国人のケースに則して、両親の学校への教育要求を聞き取り調査したいと考えている。
|