この研究の主目的は、聴覚障害児がどのようなコードを用いて、乗法九九を記憶しているか、そのようなコードが聴覚障害児の言語能力(特に、文法能力)とどのように関係しているのかを明らかにすることであった。 4校の聾学校に在席している小学部4年生〜6年生の児童44人に、乗法九九のテストと文法能力テストを実施した。乗法九九のテストは次の5種類のモードから成っていた。 【.encircledA.】数字モード:4×8=〓 【.encircledB.】数読みモード:よん×はち=〓 【.encircledC.】読下しモード:よんかけはちは〓 【.encircledD.】暗唱モード:しわ〓 【.encircledE.】指文字モード:(].【figure】.[)〓figure〓=〓 これらのテスト成績から平均正答率、平均正答スピード、誤答傾向を求めるとともに、文法能力との関係を調べた結果、次のようなことが明らかになった。 【.encircled1.】平均正答率、平均正答スピード、誤答の少なさから考えて、数字モードによって記憶している可能性が最も高い。【.encircled2.】指文字モードで記憶している聴覚障害児が若干いる。【.encircled3.】読下しモードと数読みモードは数字モードに変換されたあとで計算される。【.encircled4.】数読みモードが指文字モードに変換される可能性は若干ある。【.encircled5.】暗唱モードによる記憶は言語力にハンディキャップのある聴覚障害児は不得意である。特に、言語力のない聴覚障害児ほどこの傾向は強い。
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