研究概要 |
本年度の研究は,(1)初級日本語教授における,教師の意志決定過程を分析すると,(2)意志決定の背景となる教師の実践的な知識領域を検討することに主眼をおいた。 研究方法としては,教師の意志決定の過程を再生刺激法とインタビューにより調査し,又,知識領域については授業設計段階,授業実施中,授業実施後の各段でインタビュー調査を行った。更に,意思決定を行う先行条件を,(1)教師の教授法に関する意識,(2)学年に関する知識,(3)学習内容に関する意識,(4)授業感や信念に分け,それぞれに値を入れ,変数化する試みも行った。同時に参考資料として,学習者にも授業後再生刺激法による内観をもとめ,教師の意思決定がどのように学習者の認知に関係しているかも検討した。 研究結果として以下のようなものが出た。 (1)授業設計段階では,教師の日本語教育に関する信念や,学習者の知識に関する要因が大きく働き,授業実施中の即時的な意思決定を求められる場面では,学習者に関する意識,教授法に関する意識が意思決定の条件となっていることが明らかになった。(2)意志決定の過程を記述するために変数化を行ったが,変数に何をとるか,値をどのうよに決定するかということの枠組みが明確でなく,教師の意志決定過程を十分に記述することが出来なかった。しかし,この試みは教師の意志決定の要因を探り,また,時系列の中で記述することができるので,今後の課題としたい。 なお,研究協力者である田中亜子(日本女子大学人間社会研究科教育学専攻博士課程前記2年)は,本研究を通し,学位論文「日本語教育における教師の実践知に関する研究」を提出した。
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