研究概要 |
高等学校の教科理解のため補助日本語教材作成のために,下記の二つの調査・分析を行った。 1.ニーズ分析 高等学校において日本語教育を必要としている生徒の実態を把握し,「目標言語」を明確にするため,カリキュラム調査・日本語教育を必要とする生徒を主に指導する教論への調査・教科活動調査をアンケート及びインタビューにより行った。平成5年度は東京都を対象とした予備調査と,学校教育内での日本語教育としてはすでに実績のある小学校における日本語教育について調査を行った。平成6年度は全国の教育委員会へのアンケート調査と大都市と中堅都市の定時制高等学校でのインタビュー調査を行った。その結果,次の3点が明らかになった。(1)通常学習者は生活言語は習得しているが,学習言語の能力は低い。(2)日本語教育の学習環境が整備されていない。(3)適切な教材がない。以上のことから,高等学校のカリキュラムを視野に入れた教材と日本語教育の経験のない教員の使用を前提とした具体的な指導書の作成が急務であることがわかった。 2.高等学校の教科書分析 平成5,6年度を通して,教材開発の基礎資料として高等学校の教科書の漢字・語彙・表現の分析を行った。対象教科は「地理歴史」(世界史・日本史〕「公民」現在社会・倫理・政治経済)「理科」(化学・生物)「保健体育」(保健)「家庭」(家庭一般)〔商業」(流通経済)である。その結果.各教科ごとに出現頻度の高い漢字・語彙が異なり、教科による特徴がみられた。この特徴のある語彙は各教科の専門用語といえる。また、表現については日本語教育における学習項目に準拠し、分析した。その結果,教科書特有の表現があきらかになった。すなわち、高等学校における日本語教育は,専門用語と教科書特有の表現が学習内容となると言える。
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