研究概要 |
まず、理論面での研究成果として、我々はアンバランスな繰り返し観測データに対して高い効率の解析を実行するためにVonesh and Cartor(1987,Biometrics)により提案されている成長曲線モデルの拡張を行った。その拡張された成長曲線モデルでは、固定的な位置母数(平均構造母数)や分散・共分散母数への線形構造の導入により未知母数の個数を減少させることができ、その結果、推定効率の向上や解析結果に対するより容易な解釈が実現可能となった。さらに、その拡張されたモデルの族に、特別な構造を持たない従来型の成長曲線モデルや平行プロフィールモデルなどの応用上有用性の高い諸モデルがその特殊な例として含まれることが示された(ohtaki,1994,Jpn.J.Biometrics)。また、本研究でのソフトウェアの開発成果としては、短期縦断的研究において得られる繰り返し観測値に基づく仮想的な加齢曲線の推定のためのコンピュータアルゴリズムおよびPC上で作動するプログラムを作成した。そのアルゴリズムは、「個人別観測データへの回帰直線のあてはめ」,「あてはめられた回帰直線の傾きにより表現される検査値の年平均変化率に対するノンパラメトリック平滑化」,「仮想的加齢曲線の平均的トレンドを推定するための平滑化された年平均変化率曲線に対する数値積分」および「ランダム成分の分散・共分散を推定するための成長曲線モデルの適用による残差分析」の4個の統計的処理ルーチンで構成されている。プログラム開発にあたっては、Fortran77が用いられた。なお実行形式のプログラムはPCのMS-DOS Ver5以上で作動するものである。本研究における実データへの応用としては、日本人集団における身長、血漿中のコレステロール値や尿酸値などの臨床検査値に対する加齢変化の解析を試行した(Kuzuya and Shimokta,1995,Antheroslerosis;大瀧,下方他,1996,広島大原医研年報)
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