研究概要 |
本研究の目的は,スーパーコンピュータを数式処理に適用し,その卓越した処理性能と豊富な計算機資源を数式計算に活用することと,その最大限の能力を活かして大規模な計算を可能とすることの2点である。 ・スーパーコンピュータを用いたデータ並列処理により高い効率で生成される数値群から,中国剰余算法と組合せた補間法により多項式を決定する新たな算法を開発し,簡単な解析と比較を行った.さらに,算法の実際の評価のために,REDUCEによる試行と,C及びKLICによる並列処理の実験を行った. ・代数方程式系の求解の算法をRisa/Asir上に実現し,スーパーコンピュータを利用するための手法と問題点を明かにした.その結果,大規模な問題を扱った場合,数式処理システムとスーパーコンピュータ間で大量のデータを交換する必要があるという問題点が明らかになった.同時に,グレーブナ-基底の計算のパッケージの改良をRisa/Asirの開発者と共同で行い,世界最高速のパッケージが完成した.その結果,従来不可能であった規模の計算が可能となっている. ・多項式の因数分解について,算法の研究と様々な計算機実験を行った.ベクトル処理の効果が著しいことと,Zassenhausの算法が非常に高い実用性を有することが判明した.この実験で非常に高速なソフトウェアを完成し,極めて高次の多項式でも実用的な計算時間で分解できるようになった.その延長で,最大規模のスーパーコンピュータではどの程度の規模まで扱いうるかを明かにするために,最新の算法とその実用性についても研究を行っている.この点に関し,因数分解算法を構成する手続きについての新たな知見を得,その結果,最新の算法を改良する方法も考案した. ・Risa/Asirを用いて,ベクトル処理や並列処理と数式処理とを融合するために必要なネットワーク透過なプロセス間通信の機能について,強化及びその簡単な実験・評価を行った.
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