研究概要 |
本研究では,2年間にわたり、ネットワーク最適化問題,とくに最小カット問題に対する新しい並列型確率的近似解法を構築することを試みてきた。最近,最小カット問題に対して並列アルゴリズムや確率アルゴリズムの研究が進んで来ているが,本研究ではとくに最小カット問題を含むより広いクラスの問題に対して有効な,単純かつ効率のよいアルゴリズムの開発に主眼をおいて研究をおこなった。また、最小k-クラスタリング問題に対しても同様の研究をおこない,とくに分散最小化基準でのクラスタリングについて新しい理論的成果を得ることができた。 本研究では,まず最大格差最小カット問題を解くO(m+nlogn)時間のアルゴリズムを開発した(nは節点数,mは枝数)。最大格差最小カット問題とは,重みつき無向グラフにおいて,カットの最大格差(カットに属する枝の重みのなかで,最大重みと最小重みの差)を最小にするカットを求める問題である。つぎに,このアルゴリズムにもとづく最小カットが求める並列型確率的近似アルゴリズムを開発し,最小カットが求まる確立はKargerの方法のそれよりも小さくはないことを示した。以上の理論的成果を踏まえて,開発したアルゴリズムの実用性を検証するために広範な計算実験をはおこなった。その結果,従来手法よりも高速で,かつ厳密解に非常に近い最小カットを求めることが確かめられた。さらに,この手法を最小k-カット問題に拡張し,その有効性を計算機実験によって確かめた。 最小k-クラスタリング問題とは、d次元空間のn点を類似度が大きいk個の部分集合に分割する問題である。本研究では,とくにコンピュータグラフィックスにおけるカラー量子化への応用に焦点を当てて,この応用に適した最適化基準のもとでの最適分割を求めるいくつかの確率的近似アルゴリズムを提案した。
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