研究概要 |
平成5年10月に,現在知られているすべての種類の先読みスケジューラについてその性能評価を行い,神戸商科大学附置経済研究所からWorking Paper No.137としてまとめた.これは単純な短時間トランザクションのみのモデルに基づいており,(a)単版(1版)方式vs.多版方式,(b)最新k版方式vs.動的k版方式,(c)障害回復制御付き方式vs.非障害回復制御方式,(d)その他の最新提案されたスケジューラ,について各テーマ毎に比較評価を行っている.その結果,むやみに多くの版を保持するよりも動的な制約をもつスケジューラの方が性能が優れていること,および短時間トランザクションのみの環境なら障害回復制御を行っても性能の低下はある程度避けられることが分かった.以上のように当初計画していた「先読みスケジューラに故障回復機能を含めた場合」の理論的側面および計算機実験についてはほぼ完全に計画を達成できたと評価している. 次の課題として平成6年度に取り組んだテーマは「長時間トランザクションと短時間トランザクションが混在する場合のスケジューリング方式」についてである.これはオブジェクト指向データベースに多用される長時間トランザクションと従来型の短時間トランザクションとが混在する場合,単純な二相施錠方式では長時間トランザクションの施錠が短時間トランザクションの実行を妨げるため,これをどう解決するかという問題である.我々は先読み施錠方式で短時間トランザクションをできるだけ優先させる方式を提案し,その確率的分析を行った.さらにシミュレーションによって評価式の検証を行った.その結果,理論的にもシミュレーションにおいても我々の方法の効果が確かめられた.
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