研究概要 |
我が国上場企業とくに一般製造業に属する企業の決算における会計手続に選択要因としての行動仮説を設定し,検証をおこなった。その主なものは,1.企業の状況・属性に関する仮説として,(1).創業地,上場年齢,所属企業系列,経営者の出自,監査人等の企業の属性に関る仮説,(2).業界内での相対的業績に関する仮説,(3).ポリティカルコストに関する仮説,(4).採算の弾力性に関する仮説,(5).成長性に関する仮説,(6).財務内容・企業業績に関する仮説.2.アカウンティング・ポリシーに関する仮説として,(1).経営者の保守的態度や保守主義に関する仮説,(2).収益費用対応の原則に対する態度に関する仮説,(3).より簡単な会計手続を指向するポリシーに関わる仮説.3.重要性に関する仮説としては,(1).金額的重要性と,(2).質的重要性の両面.4.財務政策・財務上の要請に関する仮説として,(1).節税に関わる仮説.(2).利益や配当捻出に関わる仮説,(3).財務外観性に関わる仮説。である。この結果「1群の状況・属性を持つ企業の経営者が,2群のアカウンティング・ポリシーを持っており,3群の重要性のある項目について,4群の財務政策や財務上の要請に関わるとき,ある会計手続を選択する」という構造を明らかにした。この過程で,従来言われているほどには,我が国の確定決算主義の影響は強くないことがわかった。さらに,従来の会計手続を変更した場合の行動仮説については,中間財務諸表の情報を用いることにより,より精緻化することができた。
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