研究概要 |
東北日本の第四紀火山で発生した最も典型的な磐梯火山1888年噴火の岩屑流(岩屑なだれ)は分布面積が34km^2,体積は1.5km^3で,米国セントヘレンズ火山1980年噴火の場合(分布面積が64km^2,体積が2.5km^3)と比較すると,約1/2の規模である。しかし,前者は非マグマ性の水蒸気爆発型(10^<23>エルグ)で,後者はマグマ性の噴火活動(10^<25>エルグ)で,エネルギー規模には約1/100の差がある。 磐梯火山南麓の翁島岩屑流の発生時期は広域テフラ解析から約9万年から5万年前の間で,その体積は約4km^3であった。また,頭無岩屑流は規模は小さめで,発生時期は新しいと推測されるが詳細は不明な点が多い。 磐梯火山の1888年噴火前の地形をコンピューターで数値情報化して復元した。それによると,失われた小磐梯山山頂の上ノ湯付近には北に開いた爆裂火口と岩屑流との地形が確認された。さらに,1888年爆裂火口西壁の炭質物試料の^<14>C年代は1120±80YBP(830AD)であった。この年代は磐梯火山の古記録にある806年噴火活動に対応する。したがって,この活動は従来考えられていた沼ノ平火口から東麓地域のものではなく,小磐梯山山頂西での水蒸気爆発型と岩屑流の発生であったと推定された。 東北日本の第四紀火山における大型岩屑流(1km^3以上)と発生頻が度高い火山には,岩木(十面沢),岩手(小岩井,五百森),鳥海(由利,象潟),蔵王(酢川),磐梯(1888,翁島),那須(御富士山)がある。これらは一部を除いてまだ不明の点が多く,詳細な特性の把握が今後の岩屑流災害の予測には要求される。
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