研究概要 |
平成4年度の成果を踏まえて,島原半島西部においてULF-MT法による電気抵抗測定を行った.これまでの観測結果も加えて解析した結果,島原半島の一般的な比抵抗構造として,厚さ100〜数100mの高抵抗の表層の下に,厚さ1〜2km,数Ω・mの帯水層が存在する.その下は,数100Ω・mの高抵抗層が続き,深さ10km前後で再び数10Ω・mの低抵抗層となる事が明らかとなった.この構造の特徴は,雲仙地溝内の方が地溝の北側よりより浅くなる傾向が見られる.また,雲仙温泉から高岳付近でより抵抗が低くなる傾向が見られるものの,地殻変動から推定されるマグマの圧力源付近には低抵抗域は見いだされなかった.しかし,本研究で見いだされた低抵抗域は,噴火前の地震群発域に対応しており,興味深い結果である. より広範囲の比抵抗構造と地電位分布を明らかにすること,これらの時間変化を明らかにする目的で長基線地電位差観測を島原半島中央部で開始した.その結果,普賢岳から島原半島東部にかけて抵抗が低くなる傾向が見られたが,地殻変動からマグマの存在が期待される島原半島西部には低抵抗域は見られなかった.また,金浜断層-雲仙温泉-布津断層に沿う部分で地電位の増加傾向が見られた.これは,大規模な熱水循環が励起されつつあることを示すものかもしれない. 昨年度までに明らかにされた普賢岳付近の帯水層までの深さから,普賢岳のマグマは1991年4月9日に帯水層に達し,1日に約20mの速度で上昇してドームを生成した事が明らかとなっていたが,本研究の結果,マグマの上昇過程は更に過去にさかのぼって推定が可能となった.すなわち,1991年2月12日の屏風岩火口からの水蒸気爆発は,マグマが海抜下約1kmの帯水層の下面に到達した際に発生したと考えられる.
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