研究概要 |
秩序構造の形成で特徴づけられるマクロな力学系の輸送問題は、系の構成要素である粒子の運動法則から決まるのではなく、構造のダイナミックスと相互作用から決まるはずのものである。ここにマクロ力学系の新しい物理がある。プラズマにおける渦は、それが巨視的な秩序構造になっているばかりでなく、閉じ込めという現実の課題と結び付いて輸送現象の担い手としても極めて重要である。本研究では、自己組織化のダイナミックスを明らかにすることを目的として、不均一磁化プラズマにおけるドリフト渦について次のことが調べられた。 (1)渦の構造安定性 渦の多体系の発展問題が数値的に調べられ、サイクロンは有限時間で壊れてしまうが、反サイクロンは長い寿命を持って生き続けることが観測された。これは反サイクロンは、渦全体の回転の方向と、構成要素の渦糸の運動方向が一致しているのに対して、サイクロンでは、外殻の渦糸が反対方向に運動するために取り残されて、壊れてしまうものである。Antipov,Nezlin,Rodrmov,Rylovたちの実験の結果とのよい一致を見た。 初期にランダムに置かれた渦糸に対して、渦度が大きく、その広がりの中にすべての渦糸を飲み込むような系では、渦の再配置がおこり、格子上にきれに整列することが示されたが、理論的な解釈はなされないまま残されている。 (2)渦の融合過程 パリティの同じいくつかの渦糸のクラスターは、渦度が大きければ相互作用によって一つの巨大な渦へと融合していくが、あまり大きくない渦度に対しては全部の渦糸を相互作用のなかに巻き込むことが出来ないので、それぞれの単なる足し算となるに過ぎない。一方、渦度がかなり小さくなると、サイクロンはその核が融合するかわりに、外殻の渦糸をはぎ取られてしまう。これはGriffithsとHopfingerの実験の結果をよく再現している。、パリティが異なると、渦構造は不安定で壊れていく。
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