研究概要 |
円型自由電子レーザ(円型FEL)とは、直線型FELにある直線型のウィグラを周方向に丸めて小型化を図った、同軸導波管構造のウィグラを持つFELである。本研究では、磁界中を円運動する約250〜500keVの環状の相対論的電子ビーム(50〜200A)および、円型ウィグラ(12極,φ140×200mm)を用いて、マイクロ波・ミリ波領域の電磁波(パルス幅約500ns)を発生できる円型FELの研究を行った。発振周波数は10〜40GHzの間で離散的に可変であり、最大放射出力は約1.8MW(変換効率約2.2%)である。 発振周波数の単一性、周波数デチューニングの測定をヘテロダイン型スペクトルアナライザ(分解能3.9MHz)および、YIGフィルタ(分散能30MHz)を用いて行った。その結果、加速電圧415kV,ガイド磁界380Gにおいて、TM(8,1)(周波数11.77GHz)のほぼ単一モードの発振であり、発振スペクトル幅は約40MHz(Δf/f=0.3%)であった。競合モードは、TM(p,1)(p=3,5,6,7,9,10)が確認されたが、いずれも20〜30dB以下の出力であった。 また、円型FELにおける電子ビームモードω_0と発振周波数ω_sのデチューニングΔω(=ω_0-ω_s)は直線型FELに比べ、広い幅で許容されることが理論的に知られている。測定の結果、約5%のデチューニングが許容されていることが実験的に確認された。これよりTM(8,1)モードに対する20〜30dB以下の競合モードは広い許容デチューニングに起因して発生しているものと考えられる。 本研究により、円型FELのほぼ単一モードの、比較的大出力(MW級)の発振動作を実現し、競合モード等の基礎的特性を明らかにし、大出力のミリ波・マイクロ波発振器としての可能性を示した。
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