研究概要 |
本研究では,高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価に関連してアクチノイドの地層中での挙動を評価するため,自然界における有機分解生成物(フミン物質)との相互作用について検討した. 1.地層中の有機物は,不均一な分解縮合生成物であるという特徴と高分子電解質であるという特徴を合わせ持っており,環境化学,生物高分子化学等の分野で種々の観点から研究が進められている.これらは試料により分子量,官能基密度,骨格構造等が連続的に変化している類縁化合物の混合物なので,既存の錯生成の考え方を適用するには問題がある.その相互作用については多くの研究があるものの取扱にはかなりの混乱と議論があり,現在の目的に既存モデルをそのまま採用することはできないと結論した. 2.種々の起源の有機分解生成物のキャラクタリゼーションの手法を確立するため,市販フミン酸を異なる条件で分別した試料およびポリアクリル酸を酸塩基滴定し解析した.既存モデルのあるものは滴定曲線をある程度記述できるが,イオン強度や有機分解物の一般的性質との対応が不明確である.本研究では,高分子近傍におけるイオンの濃集と,高分子上に多くの酸性官能基があることによる統計的効果を考慮に入れて,弱酸性高分子の酸解離を記述するモデルを確立し,既存モデルとの比較により本モデルがそれらより優れていると結論した. 3.Np(V)とフミン酸,ポリアクリル酸との相互作用を調べるために,我々がNp(V)と単純配位子との錯生成を検討するために開発した溶媒抽出法の適用が可能かどうかを検討した.フミン酸ではコロイドの疎水性が強くなるため問題はあるものの,全体としてはこの手法が適用可能との感触を得た.但し,得られた値より低い値が報告されている例もあり,いずれに問題があるかを知るためにはさらに検討が必要である.
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