ウラン酸化物をフッ素化してUF_4を合成し、無水フッ化水素(HF)にフッ化セシウムを飽和させたものを溶媒としてウランの電気化学的挙動を検討した。ウランの酸化状態の同定には吸収スペクトル測定法を適用した。HFを取り扱う装置として、主としてフッ素樹脂の材料、チューブ、部品などを用いて、HF凝縮セル、HF貯蔵セル、溶媒調製セル、溶液調製セル、電気化学セル、吸収セルホルダー、移送系、排気系、廃ガストラップ系を作成した。電気化学的研究では作用電極として白金とニッケルを選び、参照電極はCu/CuF_2または飽和カロメル電極(SCE)を、また対極として白金を使用した。まず溶媒における作用電極のバックグラウンドのサイクリック・ボルタモグラムを測定して、電極自身の電気化学的挙動のデータを得た。この溶媒における陽極限界電位は白金電極で2.4 V vs Cu/CuF_2(または2.2V vs SCE)で、フッ化セシウム飽和の濃フッ化水素酸溶液での1.6V vs SCEよりかなり高いことを知った。次いでU(IV)を含む溶液でサイクリック・ボルタモグラムを測定してU(V)/U(IV)対が擬可逆性を持つことを知った。このことからU(V)はこの溶媒中ではオキソカチオンではなくフロロ錯体になることが考えられた。ボルタモグラムのデータを基に定電位電解法によってU(V)の溶液を比較的容易に調製できた。さらに高電位での定電位電解によってU(VI)の溶液も調製できた。U(VI)/U(V)対の不可逆性が示され、U(VI)を定電位還元するとU(V)は検出されず、U(IV)のみが生成した。この溶媒におけるU(IV)、U(V)、U(VI)の吸収スペクトルを測定し、水溶液で測定された既知のスペクトルと比較した。U(IV)はこの溶媒中で比較的安定であるが、溶液を加熱すると徐々にU(V)へ酸化した。UO_2はこの溶媒に易溶であるが、室温でも速やかにU(V)へ、また最終的にはU(VI)まで酸化された。
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