研究概要 |
放射性核種の溶存状態に関する研究は、対象核種が比較的長寿命のものについて行われており、超微量の放射性核種の特異性が明確でない。そこで、本研究は、放射性核種と安定核種のイオン種を同時に調べることが出来る放射能イオンクロマトグラフィーを用いて、(n,γ)反応で生じた短寿命放射性核種の溶存状態を調べることを目的とした。 1.放射能イオンクロマトグラフ装置のシステム化を高め、また、溶離液の組成が容易に変えられるグラジエント装置を導入し、イオン種の分離条件の検討が短時間で可能になった。 2.(n,γ)で生成するセレンの放射性核種の核種間の特異性を調べるため、6価のセレン酸塩をマトリックスとして、種々の照射条件で照射し、(n,γ)反応等で生成したセレンのイオン種を種々の溶離剤及びその組成を変化させるのが容易であるグラジエント方式で分離条件の検討を行い、最適分離条件下でイオン種に含まれる放射性核種(Se-75,Se-79m,Se-81m,Se-81g,Se-83g)の溶存割合を求め、核壊変形式による化学効果を明らかにした。核壊変による化学効果の差に基づいて、Se-81gを単離することができた。 3.資源として有効利用できるFP、アクチノイド(TRU)の化学分離について放射能イオンクロマトグラフ装置の適用の可能性を検討するため、短半減期のNp-239を用いて、Np/FPの分離挙動を検討した。陽イオン交換カラムで、2-ヒドロキシイソ酪酸を溶離剤とし、濃度をステップ状にすることによって希土類元素(RE)は原子番号の大きい元素から順に短時間で溶離する。NpはNaイオン、REより早く溶離した。しかし、この錯形成剤によるU/Npの分離には検討が必要である。
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