研究概要 |
SUS316板試験片に深さ1mmの表面予亀裂を導入し、電子ビームを繰り返し照射(電子ビーム照射0.5sec冷却29.5sec)して、照射による亀裂の伝播量Δaを計測している。試験片の拘束条件による違いを検討するために、平均応力で50MPa,100MPa,150MPaとなる引張り荷重を負荷している。これと昨年度の曲げ拘束条件、すなわち平均応力の負荷されていない条件、とを加えて引張り負荷の影響を評価できる。一方汎用数値解析コードABAQUSを使い、非定常熱伝導解析および熱弾塑性応力解析を行い、亀裂先端近傍における応力の時間変化からΔJ(J積分の1サイクルの間の変化幅)を求めている。以上からΔa/ΔN(N:繰り返し数)とΔJとの関係が試験片厚み方向に伝播する亀裂にたいして得られた。 実験結果は平均応力で0MPa,50MPa,100MPaの条件では高熱流束の照射時に圧縮で降伏しており、この降伏域が冷却時に引張りで再び降伏するという高熱流束負荷実験特有のパターンを示すのにたいして,平均応力が150MPaになると照射時にも圧縮で降伏せず、いわゆる高温疲労亀裂進展のパターンを示す。ただし、通常の高温疲労では温度は一定であるが、ここでは照射時と冷却時とで300度程度の温度差があり、材料定数の評価が難しい。したがって平均応力で100MPa以下では、昨年度から行っている数値解析でほぼ亀裂の進展の評価ができると考えている。しかし、150MPa以上では亀裂進展のパターンが異なり、解析モデルの検討が必要であると考えている。
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