研究概要 |
土壌試料中の微量ガリウムの定量法を確立するため、タンタル被罹管を用いた黒鉛炉原子吸光法について検討した。土壌中の主成分元素によるマトリックス効果を調べるため,Al,Ca,Fe,K,Mg,Naを単独で0〜 1000ppmとなるように加えたところ,いずれの元素も増感効果を示した。マトリックスモディファイア-としては,Al500ppmtNi500ppm+1M硫酸の混合溶液か最大(約5倍)の増感効果を示し、Ga 0〜100ppbの範囲で良好な検量線が得られた。地質調査所の岩石標準試料(JA-1,JB-3,JLK-1)を酸分解し、マトリックスモディファイア-を加えて標準添加法により黒鉛炉原子吸光分析を行い、標準値と近いGaの分析値を得ることができた。この方法により国内の土壌試料中のGaの含有量を測定したところ20〜50ppmの範囲であり、従来からの報告値と一致した。 土壌中のガリウムの定量法としてICP質量分析法を応用した。マトリックス効果がない標準溶液では、ppt〜ppbレベルのGaを容易に定量することができた。土壌分解液の場合は、溶解に用いた過塩素酸に起因するClO分子イオンが、ガリウムの質量数に重なって定量は不可能であった。共存成分の影響を除去する方法として、5-オクチルオキシメチル-8-モノリノール(HOQ)によるGaの抽出を行った。100ppbGa標準液の場合は、0.01MHOQによりpH4でクロロホルム中に抽出され、5M硝酸により次に逆抽出できた。土壌分解液中のGaは抽出効率が良くないので、同位体希釈法によりGaの定量が可能となることが判明した。
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