研究概要 |
農地への多量の科学肥料の継続的投入,畜産廃棄物の不完全な処理・処分,下水道等の排水処理の未普及等によって,流域からの窒素酸化物負荷量の流出が目立って増加傾向にある。とくに,葉菜類の畑作物や芝育成畑等の特定銘柄の指定産地からの集中的な排出によって,硝酸イオンの高濃度での流出が顕著となっている。固定発生源の煙突等からの排気,移動発生源のディーゼル車の排ガス等によるNOxによる大気降下物中の硝酸イオン負荷量の増加が降水の経年調査から確認できた。 土壌水中での硝酸イオン濃度の上昇は,流域からの降雨による早い中間流出成分による高濃度・高負荷量での流出現象として,多くの河川での降雨時流出負荷量観測から明らかにできた。地下水については,降水,土壌水,河川水と同じ流域あるいは隣接する流域の調査資料を中心に検討した。畑地や畜産廃棄物の野積地付近については,とくに硝酸イオンの高濃度状況が明らかとなった。 河川での硝酸イオンあるいは全窒素量としての流出負荷量の年間観測をもとに,流域面積当りの年間流出負荷量の大きさとして評価した。土地利用形態から見て,畑地面積のシエアが大きい河川流域で大きくなる傾向が明らかとなった。河川下流端での年間を通した流出負荷量を流域からの人間活動等の負荷の結果としての出力(output)として,流域への降下物負荷量を流域への入力(Input)に対する差あるいは比から、人為的な硝酸イオンおよび全窒素量での人為的負荷の大きさの評価を行った。ベース(バックグラウンド)負荷としての降水負荷に対する流域の負荷を比較することができた。最上流部が山地,緩傾斜部が畑地,低平地部が水田という典形的な地形連鎖の見られる恋瀬川流域を例として,降水・土壌水・地下水・河川水と霞ケ浦への富化原因の連関を明らかにすることができた。
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