研究概要 |
哺乳動物胎児の細胞培養を利用して、環境化学物質の催寄形性をin vitroで総合的に評価する方法を検討した。本研究では、まず既知の催奇形原である重金属および環境化学物質を対象にして、in vitro催奇形性評価に必要なfactorを検討した。妊娠11あるいは12日のマウス胎児から四肢(LB11,12)および中脳(MB11,12)を取り出し、酵素処理をして細胞浮遊液を得た。それぞれの細胞を20×10^6および10×10^6個/mlに調整し、7日間微小集積培養を行なった。培養開始時に、カドミウム10ng-10μg/ml、ダイアモックス(Az)25μg-10mg/mlあるいはグルホシネート0.1mg-20mg/mlを添加した。培養終了後、各種染色をして、用量反応曲線から軟骨分化(ID50)、中脳分化(IM50)および細胞増殖(IP50)の50%阻害濃度を算出した。また、肢芽の分化指数(DI)=ID50/IP50を求めた。催奇形性の強いカドミウムでは、ID50およびIP50がLB11とLB12との間において差異はみられなかった。各々の値は0.3μgおよび1.2μgであり、DIは0.2と肢芽における軟骨形成の著しい阻害がみられた。ダイアモックスは弱い催奇形原で、ID50、IP50とも1.5mg以上であり、LB11と12で差異はなかった。一方、催奇形性がないとされているAzでは、LB11でID50が8.0mg、IP50が3.9mgであるのに対して、LB12でそれぞれ2.5mg、3.3mgであった。DIはそれぞれ2.1と0.7となり、細胞のステージによって影響が異なっていた。またIM50は3.3mgおよび0.7mgであった。このように胎児の細胞培養において観察したこれらのfactorは、in vivoでの催奇形性と関連が認められた。しかし、環境化学物質の催奇形性をみるためには細胞の種類ばかりでなく、細胞のステージや細胞の増殖・分化の違いも考慮する必要があることが明かになった。現在、in vitroでの催奇形性を評価するために必要なこれらのfactorについて、多種類の化学物質および既知の催奇形原を用いて、検討を行なっている。
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