研究概要 |
高速液体クロマトグラフ(HPLC)と誘導結合プラズマ質量分析装置(ICPMS)とを連結した装置(HPLC/ICPMS)により、重金属ストレス下で誘導されたラン藻体内メタロチオネイン(MT)のアイソフォーム分析手法の最適化を行った.その結果,HPLCには逆相(RP)カラムのカプセルパックC8-SG-300(資生堂)を,溶離液には9%アセトニトリル溶液を用いると最も効率良くアイソフォームが分離でき,検出限界は110pg(Zn),13pg(Cd)と従来の原子吸光分析法を用いたものより約3桁低くなった. HPLC/ICPMS法により,Zn^<2+>あるいはCd^<2+>ストレス下で培養したラン藻中に,主に2つのMTアイソフォームが誘導され,アミノ酸組成にわずかな相違が認められた.Zn-MTアイソフォーム溶液中にCd^<2+>を添加すると定量的にZn-MTからCd-MTへの金属交換が生じ,Cd^<2+>の方がZn^<2+>よりもMTに対し高い親和性を示した.2つのアイソフォームのCd親和性にはほとんど差はなかった. Zn^<2+>投与(1-20μM)において,2つのアイソフォームはほぼ一定の比で誘導されたのに対し,Cd^<2+>投与(0.5-10μM)の場合は投与量に応じて誘導量の比が変化した.このことから,Cd^<2+>の無毒化には,RP-HPLCクロマトグラム上で保持時間の短いアイソフォームがより重要な働きをしていることが示唆された. 亜セレン酸共存下において,Zn^<2+>ストレスを加えると,ラン藻破砕後の水溶性画分に含まれる全Se量の58%もがMTと結合し,アイソフォームによりSe/Zn量比に差が認められた.このMT中のSeは,S-Se結合あるいはセレノシステインの形のMT中に存在することをはじめて明らかにした.セレン酸共存下においても同様な現象が認められた.
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