研究概要 |
内在性のメラニンが果たして皮膚がんの原因と考えられる紫外線誘発DNA損傷の生成を防御できるのか、紫外線による細胞致死作用を防御できるのかについて明確にするために、実験材料として,ヒト由来のメラニン高産生メラノーマ細胞(HM3KO)を準備した。DHA6日間処理によりメラニン量を半減させることに成功し、メラニン量の多い細胞と少ない細胞では類似した性質のメラニンを持つことを確認した。メラニン量の異なる2種の細胞において、BおよびC紫外線による細胞内DNA損傷(シクロブタン型ダイマーと(6-4)型ダイマー)の定量を行なったところ、メラニン量の少ない細胞により多くの損傷が誘発されていることがわかった。更に,2種の細胞において,BおよびC紫外線による細胞致死作用を検討した結果、メラニン量の少ない細胞がより高感受性であった。これらの結果から、内在性のメラニンがBおよびC紫外線誘発DNA損傷生成および致死作用を防御できることが明かとなった。更に、既に報告したメラニン量の異なる3種のメラノーマ細胞の実験結果と合わせて考察すると、1)メラニンの紫外線防護能は高々2-2.5倍の範囲である、2)メラニンの紫外線防護能はメラニン濃度に依存して非直線的に強くなり、2mug/mm3を越えると飽和してくる、3)メラニンによる防護能は、紫外線誘発DNA損傷生成と細胞致死の場合で一致することから、BおよびC紫外線による細胞死の原因としてシクロブタン型ダイマーと(6-4)型ダイマーの生成が強く示唆される、ことが明かとなった。最近、メラニンが紫外線損傷の防御よりも増感に働くとする論文が出されているが、適切な材料と高感度の検出系の利用により、メラニンの防御能を科学的に証明できたと思う。
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