研究概要 |
タイラギの仲間、ハボウキガイ(Pinna attenuate Reeve)に有毒物質(Pinnatoxin)が存在することは中国の研究者によって報告された。その後研究の進展もなく、またCaチャンネルに特異的に作用し、Ca^<2+>イオンの細胞内流入を引き起こすことにも注目し本研究に着手した。幸いに沖縄産のタイラギにもこの毒が存在するので約15000個体を購入した。この毒が水溶性であることに基づいた精製法を考案し、現在3種類の有毒物質が存在することを解明した。タイラギのむき身45kg(9000個体に相当)を処理し、その内1/3について精製を繰り返した。活性の弱いPinnatoxin Aを1.6mg(600MU、1MUはマウス1匹を10分内に殺傷するに必要な毒量)、活性の強いPinnatoxin B,C、0.6mg(30kgのむき身より)(1800MU)をマウスに対する急性毒性を指標に精製した。Pinnatoxin Aのタイラギ中の存在量はPinnatoxin B,Cの約5倍、毒性は1/8であることがわかった。驚くべきことにB,Cの毒性はTetrodotoxinに匹敵する。本研究は化学構造解明段階にまでこぎつけることが出来たが、特にPinnatoxin Aについてはその進展がめざましい。分子量はSIMSの測定結果から、711でありPinnatoxin B,Cよりも30mu小さい。また、分子式はC_<41>H_<61>NO_9と決定でき、^1H-NMRスペクトルも相当きれいで明確に面積比が確認できるようになってきており、従来にない化学構造が予想された。現在構造研究を精力的に進めているがこの物質もポリエーテル系の化合物で作業構造式は推定できている。
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