研究概要 |
本研究では、生体エネルギー変換膜でのポリフィリン誘導体の高効率・高選択な電子伝達でのポルフィリン誘導体間の距離と配向効果およびアミノ酸残基の影響について下記のように諸種のポルフィリン誘導体を用いて脂質二分膜中でモデル的に検討を行った。 1)両親媒性ポリマーとフッ素化ポルフィリン誘導体を種々のメチレン鎖を介して結合したものを合成し、それらのリポソーム膜を介する電子伝達作用を検討した結果、フッ素化することによりポルフィリン環部分がリポソーム膜中により効率よく取り込まれることがわかった。また、結合メチレン鎖長に依存したリポソーム膜中での電子伝達作用が認められ、ポルフィリン環同士がほぼ接する距離ではじめて効率よく生じることがわかった。 2)種々の長さのメチレン鎖(Cn,n=2,3,12)を介して結合したポルフィリン二量体およびハロゲン化ポルフィリン二量体を合成し、タンパク質膜およびリポソーム膜を介する電子伝達作用について検討した。その結果、いずれの膜中でも電子伝達作用はメチレン鎖がC_2,C_3の二量体がC_<12>のそれに比べて効率的な電子伝達が見られた。また、電子伝達作用では対応するモノマーに比べてダイマーで効率の良い電子伝達が認められた。さらに、タンパク質膜およびリポソーム膜中でもイミダゾールはポルフィリン誘導体の電子伝達に対して促進作用をもつことがわかった。 3)ポルフィリン誘導体のMn錯体の電子伝達を電極上およびリポソーム膜界面での過酸化水素による芳香族の水酸化反応を行うことにより検討した結果で、電極上でもポルフィリン誘導体間の電子伝達作用が観察できた。また、水酸化反応はポルフィリン誘導体の構造およびイミダゾールをもつヒスチジン誘導体の共存下で選択的に生じることがわかった。
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