研究概要 |
1.以前、我々はより強力な自動循環酸化有機触媒検索中、新しいタイプのNADモデル化合物と考えられるpyridodipyrimidine類が中性条件下単純アルコール類を自動循環的に酸化することを見出した。今回、新しいタイプのフラビンモデル化合物であるpyrimidopteridine類が中性条件下(120℃で10から25時間加熱)、アルコールやアミン類を酸化して相当するカルボニル化合物やイミン類を20から180回もの触媒回転で自動循環的に酸化することを見出した。 2.従来NAD(P)HモデルであるN-alkylnicotinamideやHantzsch ester類によるカルボニル化合物の還元反応は広範囲に渡って研究されてきた。しかしこれらの場合、基質となり得る化合物は電子吸引基と共役した極性カルボニル基や金属と配位したものなど、何らかの形で活性化されているカルボニル化合物に限られていた。1978年、米田らは1,5-dihydro-5-deazaflavinが塩酸やトリフルオロ酢酸等の強いプロトン源の存在下、構造的に活性化されていないカルボニル化合物をアルコール類へほぼ定量的に還元したことを報告した。今回、著者らはこの5-deazaflavin類を触媒として、水素源にギ酸を用いカルボニル化合物をアルコール類に循環的に還元した。合成した触媒の中で3,7-dimethyl-10-p-tolyl-1,5-dihydro-5-deazaflavinがギ酸中120℃50時間の反応条件でベンズアルデヒドをベンジルアルコールへ100%還元し、最も優れた還元触媒であることが判明した。更にこの触媒を用いて、α,β-不飽和カルボニル化合物の還元を行い、α,β-不飽和カルボニル合物の炭素-炭素二重結合を選択的に還元する自動循環還元反応系も確立した。
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