研究概要 |
種々のアゴニスト刺激により血小板は凝集・分泌の生理機能を引き起こすが、その詳細な分子メカニズムは十分明らかでない。多くの細胞系で各種アゴニスト刺激により異なる種類のホスホイノシチド特異性ホスホリパーゼC(PI-PLC)が活性化されることが知られており、ヒト血小板には4種のPI-PLCアイソザイム(PLC-β2,-β3,-γ1,-γ2)が存在することを各種抗体を用いて同定した。ヒト血小板ではトロンビンやトロンボキサンA2受容体にはG蛋白質 (Gq,Gi2)がカップルしていることが明らかにされており、PLC-βの活性化が関与している。ヒト血小板から精製したPLC-β3(155kDa)はウシ脳から精製したG蛋白質βγサブユニットにより著しく活性化された。さらに、ヒト血小板からPLC-β3の部分分解産物である100kDaのPLC-β3が単離され、155kDaPLC-β3に比べてGβγにより30倍ほど強く活性化されることを明らかにした。さらに、155kDaPLC-β3はカルパイン処理により限定分解を受け100kDaのPLC-βとなり、Gβγによる活性化が増加することがわかった。細胞内でのアゴニスト刺激によるPLC-β3の動態を、PLC-β3の特異的アミノ酸配列に対する抗体を用いて検討した。ヒト血小板のカルパイン活性化剤であるジギトニンやA23187処理によりカルパインの活性化に伴うPLC-β3の限定分解が見られた。また、ヒト血小板可溶性画分には140kDaのPLC-β3が存在することが特異的抗体により検出され、カルパイン活性化により分解されることを明らかにした。コラーゲンやトロンビンなどのアゴニスト刺激により、カルパインの活性化によるPLC-β3の限定分解が生じ、Gβγによる感受性が高まるることが血小板凝集の後期になんらかの役割を果たすことを示唆した。
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