研究概要 |
(1)2つのSPT遺伝子プロモーターの基本転写活性に必要な領域 TATABoxを持ち、cAMPにより転写促進を受ける上流のプロモーター(+1より転写)、TATABoxを持たず、ホルモンにより転写が影響を受けない下流のプロモーター(+66より転写)、両者の基本転写活性に必要な領域を特定するために、3'側を+36,+106にそれぞれ固定した5'上流からの順次欠失組換え体を作製した。上流からの転写は-192〜+36で最大となるので、-103〜+36に含まれるCCAAT Box、TATABox以外に-192〜-103に含まれる別のエレメントが最大活性を出すために必要であろうと推論された。一方、下流のプロモーター活性は+36〜+106でも見られたが、+11〜+106,-51〜+106と上流域を長く含むにしたがって上昇した。TATA-lessプロモーターの一つとして提唱されている+11〜+106に存在するHIP1(Housekeeping initiator protein 1)配列が仮に機能しているとしてもそれ以外に下流プロモーターの至適活性に必要な部分が-51〜+11に存在することが示唆された。 (2)SPT遺伝子の転写調節と細胞特異性 当初予想していた-684〜-621に存在するcAMP responsive element(CRE)ではなく、-103より下流の領域がcAMPによる転写促進に寄与していることが判明した。この転写促進はHepG2細胞でのみ見られ、HeLa,CHO-K1,CV-1,COS-1細胞では観察されなかった。cAMPによるSPT遺伝子の転写促進が蛋白質合成阻害剤であるシクロヘキシミドで抑制されることから、CREB(CRE Binding protein)がまず、ある転写因子遺伝子の肝特異的転写促進をひきおこし、つぎにその翻訳産物である転写因子がSPT遺伝子の-103よりも下流の領域に作用し、その結果SPT遺伝子の転写促進が引き起こされるものと考えられた。
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