研究概要 |
Lipoyl-AMP:N^ε-Lysine Lipoyltransferase(リポ酸転移酵素)はlipoyl-AMPから,リポ酸を補欠分子族として持つ特定の蛋白質のリジン残基にリポ酸が転移する反応を解媒する.我々は以前にグリシン開裂酵素系のアポH蛋白質をリポ酸の受容体として用いてリポ酸転移酵素の活性がミトコンドリアにあることを明らかにし、本研究では以下の事を解明した。 1.ウシ肝臓ミトコンドリアからリポ酸転移酵素IとIIを精製しその性質を調べた。最終的に,リポ酸転移酵素IIは単一にまで精製されたが,Iは僅かな夾雑物を含んでいた。両酵素はハイドロキシルアパタイト-カラムクロマトグラフィーで分離されるが,1)精製過程でのイオン交換-,疎水性-,およびアフィニティー-カラムクロマトグラフィー等における挙動 2)分子量(SDS-PAGEおよびゲルろ過で40kDa)3)解媒的性質(基質特異性,至適pH)等において相違は見い出されなかった。両酵素はlipoyl-AMPのみをリポ酸供与体とし,リポ酸とMgATPでは基質になり得ず,本酵素にリポ酸活性化能はなかった.また,両酵素はlipoyl-AMPのみならずhexanoyl-,octanoyl-およびdecanoyl-AMPにも親和性を示し,それぞれのアシル基をアポH蛋白質に転移した。 2.リポ酸転移酵素I,IIは共にH蛋白質以外の,リポ酸を補欠分子族として持つ蛋白質であるピルビン酸,α-ケトグルタル酸および分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体のE2のリポイルドメインにもリポ酸を転移した.
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